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間 伐 講 座

島崎洋路先生著「山造り承ります」より

第1回 <木の高さと太さについて>

森は適当な密度管理がされていないと、風雪に弱かったり、林床の土壌 が流出したりと、とても不健全な森になってしまいます。間伐によって 木と木の間に空間をあけ、枝葉が十分に光をうけられるようにすれば、 木々は十分に太ることができ、健全な森に成長していくのです。

では、どの位に間伐していけばいいのでしょうか?? 


その前に・・・ 木の高さと太さについて。

ひょろ長い、モヤシ林。不健全な放置林の典型的なものですよね。混み 過ぎていて成長が悪いからなのですが、太くなれないのは分かります が、どうして高さだけはあるのでしょうか???

木の高さは、手入れの有無や枝払いの強弱にかかわらず、樹種と「土地 の肥沃度」によってそのよしあしが決まると言われています。(「地位 指数」というもので表します。)したがって、枝葉が沢山あって光合成 が旺盛だからといって高くなるものではないのです。

一方、太さの成長は枝葉の量によって左右されます。光合成が活発に行 われれば太くなります。(太さは「胸高直径」で表します)そして枝葉 は光が当たれば茂り、当たらなければ枯れるために、密度が高くなれば 必然的に枯れやすくなります。


この木の成長の二つの性質によって、混んだ林はヒョロヒョロのモヤシ 林になってしまうというわけです。


※地位指数(ちいしすう)
樹種別の成長曲線図から求めます。樹齢40年生時の上層樹高で 表します。 成長曲線から40年生時の樹高を予測し、それが22mであれば「地位指数 22」と表します。
※胸高直径(きょうこうちょっけい)
木の山側からみて地面から1.2mのところの直径です。2cm単位で 表すこととされていて、1cmから3cmまでは2cm、3cmから5cmは4cm、・・・ として測樹します。直径が測れる「直径巻尺」などで測定します。 自分の体で、1.2mのところがどの位置になるか覚えておくと便利です。

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第2回 <目安は木の高さの20%>

前回、「木の高さは、土地の肥沃度によって決まる、光合成が旺盛だか らといって高くなるものではない。」と書きましたが、これはあくまで も林を広く見た時の大まかな話です。当然自然界のことですので、たと え同じ状況の土地に同じ時期に一斉に植えた人工林でも、高さが必ず同 じということはありえません。ただ、土壌による影響の度合いが非常に 大きいということなのです。

森の中には、成長の良い木もあれば、悪い木もあります。そのどちらの 樹高が高いかといえば、成長のいい、太く成長した木のほうが少なから ず高くなる傾向はあるようです。

多少でも高さにバラツキがある林で、その区画の樹高は?と聞かれた場 合、それを表す高さとしては一般的に「上層樹高(じょうそうじゅこ う)」というものを使用します。これは、その林の上層を形成している 木々の平均樹高で、簡単にいうと、背の低い木は無視して、成長の良い 高い木だけを選んで平均をとった樹高ということです。


さて、健全な森の密度の出し方は、いろいろな方法があります。先人達 が経験的に出してきたものや、綿密な計算に基づく複雑怪奇な理論的な ものなど、様々です。 しかし、島崎先生いわく、いずれも結果的には、木の高さ(上層樹高) に対する木と木の平均間隔の割合を20%程度に管理すれば最低限健全 な森にすることができるということです。(この割合を「相対幹距比 (そうたいかんきょひ)」といい、略号Sr.で表します。ここ、重要 です!!)


実に、単純明解ですよね。

具体的には、樹高15mならば3m間隔、樹高20mなら4m・・・といっ た具合です。

こうやって管理された森は、自然的な下枝の枯れ上がりが樹高の50〜 60%で止まり、枝葉が十分についているために幹の太り方も良くな り、樹幹の「形状比」も80後である場合が多く、健全な森を形成 していると言えるのです。


※「形状比」
樹高が胸高直径の何倍に相当するかという値。これが90以上を 示すような林分は混み過ぎで、下枝の枯れ上がりも樹高の70〜80% にもなっていて、風や雪にとても弱い林になってしまうのです

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第3回 <形状比と密度の関係>

前回、「形状比」という言葉が出てきましたが、木が若いうちは、ヒョ ロ長いのは仕方ないとしても、樹高が12〜13mくらいになるころに は、これを80倍以下に保つように間伐して密度調整しないと雪や風に 弱い木になってしまいます。

しかし、風雪への抵抗力は、何も形状比だけの問題ではありません。そ の林の密度にも密接な関係があるのです。 人工林が「坪植え」といわれるような1坪に1本という高密度に沢山植 林して、これを徐々に間伐してすかしていくのは、施業方法による理由 もありますが、これが自然災害への対処としての理由もあるのです。ま ばらに立っている木よりも何本も集まっている森の方が当然風などへの 抵抗力も強いからなのです。隣合った木々がお互いに支えあっているか らです。


では、植林されてから一度も間伐されていないような形状比90〜10 0倍以上にもなる超過密林の場合はどうでしょうか。


形状比から言えば、非常に弱い林ですが、密集しているためにそれなり に風などにも耐えることが出来ていましたが、あまりにも高密度で 不健全な森であるために間伐が必要です。しかし、これを強度に間伐し てスカスカにしまうと、今度は風などに耐えられなくなる可能性が増し てきてしまうのです。

また、こういった林は下枝がかなり枯れ上がっていて、林内に光が入る ようになっても光合成が行われる枝葉が充分にない為に、太くなること への十分な効果は期待できない場合が多いようです。


「間伐は木の高さ20%を目安に」と前回書きました。

これはこれで非常に理にかなった方法なのですが、決してすべてではな いですよ、ということを付け加えたかったのです。
間伐というのは非常に奥深いものですよね。


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『林分現況調査表』の具体例

【用語解説と各項目の計算方法】 表にある“○内数字”の順に解説し てあります。

サンプルデータ(pdfファイル)

@ha当本数:プロットが20m x 20mで400uなのでhaに換算25倍する。
A平均直径:すべての本数×直径を総本数で割る。
BとC 樹高:大中小3本を切って測定する。それを元に樹高曲線を描き、そのグラフから樹高ごとに読みとる。
平均樹高: 総樹高÷総本数=15.8m
上層樹高: 総本数の高い方から3分の1の本数分の平均
  • 22p 1本  19m   19
  • 20   6   18m  108
  • 18  15   17m  255
  • 16   2   17m   34   計416÷24本=17.3m
Dha当断面積:平均直径を利用する(この場合14.7p、半径7.35p)
0.0735 x 0.0735 x π(3.14) x 75=1.27ux 25倍=32u
Eha当材積:
単木材積の求め方: 胸高断面積×樹高×胸高係数
<例> ヒノキ直径22pの場合
0.11 x 0.11 x 3.14 x 19m x 0.4992 ≒ 0.35
  • (ア) 大変煩雑なので「幹材積表」(「山造り承ります」p.188)を利用し読みとって計算する。
  • (イ) 直径階ごとの材積を求め、その合計を25倍する。この表では10.542m3×25=263.55m3
F枝下高:樹高の50〜60%が望ましい。
→ 測定して、混みぐわいの判断材料に利用
    
G地位指数: (「山造り承ります」p.232)
  • 樹種別樹高曲線(地位指数曲線)から読みとる。
  • 林齢27年で上層樹高平均が、約17m
    40年で23m 指数23 地位:上の中
H密度(Sr=相対幹距比):
平均樹高に対して平均樹間距離がどれぐらいかを%で表す。
理想的には18〜20%
上の例では13.3%
1875本÷10000u=5.3u(1本当の面積)
   
この平方根が平均樹間距離(=2.3m)
   よって2.3m÷17.3m×100%=13.3%
   

間伐して

(1)20%に押さえようとすると

   10000u÷(17.3 x 0.2)2 =835
   ha当本数1875−835=1040本
   実際に切る本数:1040÷25= 42本
   

(2)18%に

   10000u÷(17.3 x 0.18)2 =1031
   1875−1031=844
   実際に切る本数: 844÷25= 34本
   (「山造り承ります」p.234の「密度判定図」を利用すると、
   大雑把だが、大体同じような数値を求めることができる)
I林分形状比(樹幹形状比)
樹高が胸高直径の何倍かで表す。通常80前後が適正とされている。
自然状態でこれよりも大きい場合「かんまん」度が強い(ホッソリ している)という。
下枝の枯れ上がりが大きく、葉量が相対的に少ない、枝下高が大きすぎるということになる。
隣り合う木との間隔が狭すぎることを意味する。
<意識的にかんまんな木を作る場合は別> 大径木目的なら、枝下高を低く保つ。
上の表の例では
平均樹高÷平均直径15.84m÷0.1435m=110
(上層樹高で見ると17.3m÷0.1435m= 120 )

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